今ではメタボリックシンドロームなど、肥満に関する健康問題は広く知られるようになりました。
一方で「やせ」も、様々な健康問題を招くだけでなく、骨粗しょう症の原因となることが分かっています。現代では、細く美しくなりたいという憧れから、ダイエット志向が高まり、標準体重より少ない細身の女性が増えています。骨粗しょう症は高齢になって発症することが多い病気ですが、無理なダイエットをすると、年齢に関係なく骨粗しょう症リスクを高めるので注意が必要です。
女性の骨密度は一般的に18歳頃にピークを迎えて、40代を過ぎると徐々に減る傾向にあります。
そのため、10代のうちにできるだけ骨密度を増やし、成長期以降は、将来の骨密度減少に備えて骨密度を保っていくことが大切です。過度なダイエットは、骨密度減少が著しくなる閉経後に向けて蓄えておくべき骨量を減らしてしまうことになります。
まずは、ダイエットが自分にとって本当に必要かどうか、適正体重と肥満度を知る目安となるBMIを調べてみましょう。 BMIは身長からみた体重の割合を示す体格指数で、肥満を判定する上でも用いられています。
BMIが25以上だと肥満とされ、高血圧、脂質異常症、糖尿病などになる可能性が高くなるので、無理のない食事療法や運動療法で適正体重に近づけましょう。 逆にBMIが18.5未満の場合、ダイエットを行うと骨に好ましくない影響が現れる恐れがあります。
やせすぎや急激な体重減少は、なぜ骨に悪影響があるのでしょうか。その原因は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、急激にやせることによって卵巣の働きが低下し、女性ホルモンの分泌が減少してしまうことです。この女性ホルモンはエストロゲン(卵胞ホルモン)といい、女性の二次性徴を促して女性らしい体つきをつくってくれますが、骨にたいしては骨を壊す破骨細胞の働きを抑え、骨をつくるのを促してくれます。エストロゲンは、 主に卵巣でつくられていますが、よく似た物質は脂肪細胞でもつくられているため、やせると体内のエストロゲンの量が減少し、骨密度の低下につながるのです。
2つ目は、体重の減少に伴って骨への負荷が少なくなることです。骨には適度な負荷がかかると、その情報をとらえて、かかった負荷に負けまいと、自分で自分を強くする仕組みがあります。体重が少ないと、せっかくのこの仕組みがうまく働いてくれなくなります。
3つ目は、食事による栄養のバランスがくずれて、骨をつくるために必要な栄養が不足してしまうことです。ダイエットのなかには、ある特定の食べ物を摂り続けることをすすめるものがあります。こうした極端な食事制限は、健康な体を維持するのに必要なエネルギーや栄養を不足させ、低栄養という状態を引き起こします。低栄養は、カルシウムやビタミンD不足による骨粗しょう症や、鉄分不足による貧血を招きます。また、最近の研究により、妊婦や若い女性の低栄養が、その子どもの将来の高血圧や糖尿病といった生活習慣病のリスクを高めるとの報告がされています。
無理なダイエットは、骨粗しょう症の予備軍になるだけでなく、家庭での食習慣を通して自分の次の世代の子どもにまで悪影響を及ぼします。自分の健康のためだけではなく、将来の子どもの健康のためにも、適正な体重を維持するようにしましょう。