骨の健康に影響する生活習慣病(2)
〜慢性腎臓病
2017年5月10日
慢性腎臓病は腎臓の働きが徐々に低下する病気で、多くは肥満、喫煙、高たんぱくの食事や、糖尿病、高血圧などの生活習慣病に関係して生じます。長年の不適切な生活によって、中高年になって腎臓病を発症する人が増加していることから、最近では慢性腎臓病も生活習慣病のひとつと考えられるようになっています。
腎臓は血液中の老廃物をろ過して尿として排泄したり、体内の水分量や塩分の調節、赤血球をつくる働きのあるホルモンの分泌、血圧の調節など、重要な働きを担っています。そのため、慢性腎臓病になるとさまざまな弊害が起こります。
初期は腎臓の機能が低下しても、糖尿病と同様、症状はありません。しかし、進行すると体内の水分量を調節できなくなって「むくみ」が生じたり、老廃物が排泄されずに「だるさ」を感じたり、赤血球をつくる働きのあるホルモンの分泌ができずに「貧血」、「めまい」が現れるなどします。
病気を放置して末期腎不全になると、腎臓の働きを補うための透析療法が必要になることもあります。
骨の材料となるカルシウムは、腸管で吸収され血液によって骨に運ばれます。カルシウムを腸管で吸収するにはビタミンDが必要になりますが、そのビタミンDはそのままの状態では働いてくれません。腎臓や肝臓でビタミンDが活性化され、活性型ビタミンDに変わることで、腸管からカルシウムを効率よく吸収できるようになります。
慢性腎臓病で腎臓の機能が低下すると、ビタミンDの活性化がスムーズに行われず、食事でカルシウムを摂っても吸収がうまくできなくなります。また、血液中のカルシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶け出て補おうとするので、骨は次第に弱くなってしまいます。
慢性腎臓病は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病があると、発症するリスクが高くなる病気です。特に、糖尿病や高血圧と関係が深く、合併すると全身の血管で動脈硬化が進むため、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなります。
腎臓の異常は、尿検査の「たんぱく尿」や「微量アルブミン」、血液検査の「クレアチニン」の値などでわかります。腎臓機能の低下が疑われたら早めに受診することが大切です。
糖尿病や慢性腎臓病の人は骨密度が高くても骨折リスクが高い
糖尿病や慢性腎臓病があると、骨密度が正常値であっても、骨質が低下して骨が弱くなっていることがあります。同じ骨密度の人でもこれらの病気がある人は、ない人に比べて骨折リスクが上昇します。生活習慣が関係して発症し、日本人の糖尿病の9割を占める2型糖尿病では、男性が4.73倍、女性では1.86倍に骨折リスクが上がり、慢性腎臓病では進行すると2倍に高まるとされます。そのため、骨粗しょう症が軽症であっても治療を行うことが勧められています。