骨粗しょう症の運動療法とは(1)
〜運動が骨を強くするのはなぜ?
2018年1月16日
骨粗しょう症の治療や予防にどうして運動が大切なの?
骨粗しょう症によって骨がもろくなると、健康な人では大事に至らないようなわずかな衝撃で骨折することがあります。骨折は自立した生活を困難にし、生活の質(QOL)を著しく低下させるきっかけとなることから、骨密度の減少を食い止め、骨折を予防することが骨粗しょう症治療の中心となっています。
骨粗しょう症の発症は加齢や閉経、遺伝など避けることのできない要素がある一方で、日頃の生活習慣が及ぼす影響も大きく、薬による治療と併行して、適切な栄養摂取と運動習慣の指導が不可欠と考えられています。
運動が骨粗しょう症の予防や改善に有効な理由のひとつに、骨密度を維持・上昇させる効果があります。ある研究によると、6〜24カ月間の間、耐久運動※や筋力増強運動を行ったところ、閉経前の女性では、年間平均で腰椎(腰の骨)の骨密度が0.91%、大腿骨近位部(脚の付け根の骨)の骨密度が0.90%上昇し、閉経後の女性では、腰椎で0.84%、大腿骨近位部で0.89%上昇したとされています。
運動のもうひとつの効果は、筋力とバランス能力の維持・向上です。高齢者の転倒の原因となりやすい歩き方として「すり足歩行」がありますが、これは筋力の衰えから、歩行時に足が高く上がらなくなり、地面に足をひきずるような歩き方になることです。すり足歩行では、歩幅が狭く、体勢が不安定になるので、わずかな段差でもつまずきやすくなります。
いつまでも溌溂とした生活をするには、運動を続けて身体機能を維持し、転びにくい体をつくることが大切と言えます。
※耐久運動:相撲や短距離走のように瞬時に力を入れる運動とは反対に、ジョギングや長い距離を泳ぐ遠泳などの持久運動のこと。
運動がなぜ骨密度の維持や上昇に効果があるのでしょうか。
それは、骨には負荷がかかると、その負荷に応じて骨自身を強くする仕組みがあるからです。運動をするとその刺激を受けて骨にカルシウムが沈着しやすくなったり、血流がよくなることで骨をつくる細胞(骨芽細胞)が活発になります。そのため、普段から骨に適度な負荷をかけ続けることが、強い骨を保つのに必要です。
日常生活では、1日中デスクワークなどで体を動かす機会のない人に比べると、体を使う仕事に従事する人やスポーツの習慣のある人の方が、骨はより強くなります。また、骨に対する負荷には、体の重みによる負荷も含まれますので、低体重の人では、骨が強くなりにくく、骨粗しょう症につながりやすいと考えられます。