50代以上になると半数の人がロコモ予備軍
介護を必要とする人は、平成29年度9月時点でおよそ640万人にのぼり、この10年間で200万人以上増加しています(厚生労働省 介護保険事業状況報告平成29年9月分より)。
その原因には、脳卒中や認知症などさまざまなものがありますが、見逃してならないのが「運動器」の障害です。
運動器とは、体を動かすのに必要な、骨、関節、筋肉などの総称です。これらのうち、どれかひとつでも機能が低下すると体全体の働きが悪くなります。そうすると、痛みを感じたり、歩くのがつらくなったりして日常生活に支障が生じ、時には転倒から骨折して要介護状態になってしまうこともあります。
このように、足腰をはじめとする運動器の障害により自立度が低下し、介護が必要になることや、その危険性が高くなった状態を「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」といい、主に@骨粗しょう症などの骨や関節の病気、Aバランス能力の低下、B筋力の低下によって引き起こされます。
内臓脂肪の蓄積によって、さまざまな病気を引き起こす「メタボリックシンドローム(メタボ)」のリスクはよく知られるようになりましたが、生涯元気に過ごすためにはこのメタボとともに、ロコモの予防もとても大切です。
ロコモが要介護に結びつくこともある
厚生労働省の国民生活基礎調査(※)によれば、要支援になる原因の1位を関節疾患(17.2%)、3位を骨折・転倒(15.2%)がそれぞれ占め、要介護の原因としても「骨折・転倒」が上位にランクインしています(要介護度4で3位(12.0%)、要介護5でも同じく3位(10.2%))。
同じく要支援・要介護の主な原因となる脳卒中や認知症と比べて、関節疾患や骨折には「怖い病気」というイメージが持たれにくいですが、特に高齢になったときの健康状態と密接につながる、重大なリスクと言えるでしょう。
ロコモは40歳ぐらいから始まるとされ、自分では気づいていなくても当てはまる人は大変多いと考えられています。ロコモはある日突然起こるわけではなく、症状がないまま密かに忍び寄ってきます。その危険性は高齢者だけに限らず、若い人にもあります。
日本整形外科学会が定める「ロコチェック(→「骨粗しょう症対策でロコモティブシンドロームを防ごう」参照)の7項目に1つでも当てはまるか、やや当てはまる人は、「ロコモ」か将来ロコモになる可能性の高い「ロコモ予備軍」とされ、50代以上では半数以上の54.2%が該当し、まだ若く元気な20代から40代の人でも、37.5%が該当するなど、高い数値を示しているのです。
特に男性は70代以上、女性は60代以上になると6割近くがロコモ予備軍に該当するようになるという結果がでています(ロコモ チャレンジ!推進協議会『第1回ロコモティブシンドローム生活者意識調査』より)。
ロコモは誰にでも生じる可能性があります。”自分は大丈夫”とは決して安心はできないのです。
※厚生労働省 「平成28年 国民生活基礎調査の概況」より