骨粗しょう症 トピックス 【 Vol.18】

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「ロコモティブシンドローム」に気をつけよう(3)

〜しっかり歩ける、ロコトレ実践!

2018年5月16日

いくつになっても筋力やバランス能力はアップできる!

骨や関節、筋肉などの運動器に障害があると、歩いたり立ち上がったり、といった動作がスムーズにできなくなります。だからといって動かさないでいると、さらに骨や筋肉などが衰えて、筋力やバランスをとる能力が低下してしまいます。そして、ますます動くのがつらくなり、痛みなどの症状も強くなってしまいます。

ロコモの予防や進行を抑えるためには、なるべく早い段階から、筋力やバランスをとる能力を維持するためのトレーニングを行うことが重要です。

高齢者や骨粗しょう症や変形性関節症などの病気がある人でも、医師の助言を受けながら適切なトレーニングを行えば、筋力やバランスをとる能力を鍛えることができます。

日本整形外科学会ではロコモの予防と改善のために、「ロコモーショントレーニング(通称ロコトレ)」(※)が勧められています。

トレーニングといっても、難しい運動をたくさんしなければいけないわけではありません。基本となるのは「開眼片脚立ち」と「スクワット」の2つの運動だけ。この2つの運動を習慣的に行うことで、筋力とバランスをとる能力を向上させ、「歩く」「立ち上がる」が、スムーズにできるようになるのです。


●開眼片脚立ち

しっかりと歩くためには、下半身に十分な筋肉が必要です。この下半身の筋肉の強化に有効なのが「開眼片脚立ち」という運動です。

この運動は、第15回 骨粗しょう症の運動療法とは(2)でも紹介しています。もう一度、やり方をおさらいしてみましょう。

まず、机やイスなどの横に立ち、顔をまっすぐ正面に向けます。そして、片脚を上げて立った状態を1分間保ってください。これを左右の脚で交互に2〜3回ずつ行います。足は、床に着くか着かないかの高さで、大きく上げる必要はありません。転倒しないように、近くにつかまることができる物があるとよいでしょう。

この運動は片脚で体を支えるので、筋力だけではなくバランス能力も鍛えられ、歩いているときに転倒しにくい体になります。また、骨にも刺激が加わるので、骨を強くすることもできます。

一人での歩行が困難な場合は、誰かに見守ってもらいながら机に両手や指を置いて、できる範囲で行ってみましょう。


●スクワット

「立つ」、「歩く」、「座る」といった日常生活の基本動作で使う筋肉を、総合的に鍛えることができる運動が「スクワット」です。

まず、ふらついたときにすぐおしりをつけるようにイスやソファの前に立ちます。そして、足を肩幅ぐらいに開き、つま先は少し外側に向けます。この姿勢からイスに腰かけるようにゆっくりとおしりを下ろします。このときに膝がつま先より前に出ると、膝関節に負担がかかるので、つま先が膝より前に出ないように注意しましょう。おしりを下ろすときは、深呼吸をするようにゆっくり息を吐きながら下ろし、立つときには息を吸います。これをゆっくりとしたペースで、5〜6回繰り返します。

痛みがあるところまでおしりを降ろす必要はありません。自分ができる範囲で、膝を曲げる角度を調整しましょう。痛みがあるときや支えが必要な場合は、机に手を置いて行っても大丈夫です。基本のスクワットが難しい人は、いすに座って前方の机に手を置き、おしりをわずかに浮かす動作を繰り返すだけでも効果があります。

この運動を行うと筋力やバランス能力がついて、立ち上がりが楽にできるようになります。また、軽度の膝の痛みがある人では、痛みを和らげる効果もあります。

こんな運動をプラスして効果をさらにアップ!

ロコトレに慣れてきたら、他にもいろいろな運動を取り入れてみましょう。ラジオ体操やウォーキング、水泳などに併せて、ストレッチや関節の曲げ伸ばしを行うことで、筋肉や関節をしなやかに保つことができます。

その際、ロコミル手帳などを使って毎日の運動内容や歩いた歩数を記録するのも、達成感を高め、運動を継続するために効果的です。

ロコモは30歳代から始まります。ロコモ予防はメタボ予防にもなるので、若い人でもなるべく早くから運動習慣をつけるようにしましょう。

本サイト「いいほね.jp」の「骨粗しょう症を予防するには?」のページでも、運動の方法をイラスト入りで紹介していますので、参考にしてみてください。

痛みや息苦しさなどを感じたら、医師の診察を受けるようにしてください。

<注意点>
・骨粗しょう症や変形性関節症などで治療中のときはまず医師の判断を仰ぐ。
・腰や膝の痛みがあったり、筋力の衰えやふらつきが強くなってきていると感じているときなどは、運動をする前に受診して医師に相談する。
・無理をせず自分のペースで行う。
・呼吸は止めずに自然に呼吸をする。
・痛みが出たときはすぐに中止して医師に相談する。
・食後すぐは行わない。
・運動は1日1〜3回でも十分。早く改善したいからと1日に何度も行うと、膝や腰の痛みが強くなったり、転倒したりする場合がある。