骨粗しょう症 トピックス 【 Vol.22】

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骨の強さに大きな影響を与える「骨質」(1)

〜骨折には、骨の「量」だけではなく「質」が関わっている

2018年11月16日

骨の強さは骨の「量」=骨密度だけで決まるのではありません。もうひとつ、重要なのが「骨質」です。骨の質が悪いと骨は弱くなり、たとえ骨密度がそれほど減っていなくても骨折する危険性が高まります。骨質は年とともに低下しますが、食事や運動不足などの生活習慣も深く関わっています。骨を強くするためには、骨の質を高める生活を心がけることが大切です。

骨折には、骨の「量」だけではなく「質」が関わっている

骨は1度作られたらそれで終わりというわけではありません。古くなった骨を破骨細胞が壊し、骨芽細胞が新しい骨をつくる、という骨代謝を繰り返しています。こうして「壊す」と「つくる」のバランスがとれているときは骨量が一定で、骨の強度を保つことができます。
ところが、年齢とともに体の持っている再生能力が衰えると、骨を「つくる」能力が低下してしまいます。すると、「壊す」働きの方が強くなってしまうので、骨密度が低下します。また、女性ホルモンのエストロゲンには、骨を壊す破骨細胞の働きを抑制する作用がありますが、女性の場合、閉経後にエストロゲンの分泌が落ちるので骨密度が低下します。このように骨密度が低下することで生じるのが骨粗しょう症です。
骨粗しょう症になって骨が弱くなると、骨折する危険性が高まります。ところが、同じ骨密度であっても、骨折する人もいればしない人もいます。また、骨密度が低下していないのに、骨折する人もいます。このことから、骨の強さには骨密度だけではなく、骨の性質を示す「骨質」が関係していると考えられるようになりました。
骨の強さを決めるのは「骨密度が7に対し骨質が3」とされています。同じ骨密度の人では、グラフで示すように年齢が高い人ほど骨折する人が多くなります。このことからも、骨折しやすくなるのには骨密度の低下と骨質の劣化の両方が関わっていることがわかります。骨密度が高いから骨折の危険性はないとは言い切れないのです。

コラーゲンが劣化すると骨質が低下する

では骨質の低下とは、どのような状態になることなのでしょうか。骨の質に大きく関係すると考えられているのが、コラーゲンの劣化です。
骨はコラーゲンというたんぱく質が束になってコラーゲン線維となり、ビルにたとえると鉄筋部分の役割をしています。コラーゲンは骨以外にもアキレス腱や、膝のお皿を動かす膝蓋腱(しつがいけん)のほとんどを作っていて、非常に力強い性質を持っています。骨はこの強靭なコラーゲンが柱を形成し、そのまわりにカルシウムなどのミネラルがコンクリートのようにはりついた構造をしています。
強い骨になるには、コラーゲンにミネラルが均一に沈着する必要があります。そのためには、コラーゲンがきれいに並んで揃った状態になっていなければいけません。しかし、コラーゲンの量や質が変化すると、きれいな束にならず、ミネラルが均一に沈着しにくくなります。つまり、骨量を示すカルシウムなどのミネラルがいくら十分であっても、柱となるコラーゲンの質が悪ければ、強い骨を作れなくなってしまうのです。
コラーゲンは、30〜40歳代をピークに年とともに減少しますが、ビタミンK、ビタミンD、葉酸などが不足することでも骨量の減少だけでなく骨質の劣化が起こります。これらは骨の質を良い状態に保つのに大切な成分です。不足してコラーゲンの劣化が起こると、骨に大変小さなひびができます。これを「微細構造の変化」といい、骨折を招きやすくします。
コラーゲンは骨だけではなく、筋肉や関節をつなぐ靭帯などにも含まれています。そのため、減少すると体がスムーズに動くのに影響を及ぼして、転倒のリスクも高めてしまいます。このようにコラーゲンは骨の質だけではなく、転倒のリスクにも関わり、骨折の危険性をさらに高めることになるのです。