骨粗しょう症 トピックス 【 Vol.23】

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骨の強さに大きな影響を与える「骨質」(2)

〜骨質の低下には生活習慣も関わっている

2018年12月22日

骨質の低下には生活習慣も関わっている

骨質の低下はコラーゲンの劣化だけで起こるわけではありません。もうひとつ、大きな影響を及ぼすのが生活習慣です。
食事でとった栄養は、呼吸で取り入れられた酸素で燃やされ、「酸化」することでエネルギーになります。このとき、酸素の一部は「活性酸素」と呼ばれる不安定な物質に変化します。活性酸素は「老化を進める」ともよく言われておりますが、体にはそれをとり除く機能があるので、生成と消去のバランスがとれていれば問題はありません。
ところが、活性酸素が増え過ぎた状態が続くと、消去が間に合わなくなって細胞を傷つけてしまいます。このような状態になることを「酸化ストレス」といい、酸化ストレスによって細胞へのダメージが蓄積されると、鉄がさびるように体もさびた状態になってしまいます。これが「老化を進める」ということで、過剰な活性酸素から生じた酸化ストレスが、全身の細胞の機能に障害を与えます。
酸化ストレスは老化だけではなく、がんや心筋梗塞、糖尿病、動脈硬化など、さまざまな生活習慣病との関係も明らかになっています。かたよった食事や運動不足、喫煙などの生活習慣を続けていると、活性酸素が過剰に発生して、酸化ストレスが常に加わった状態になります。
生活習慣による酸化ストレスが及ぼす影響は、骨も例外ではありません。酸化ストレスが生じると、コラーゲンの劣化を招いたり、骨をつくる骨芽細胞や骨を壊す破骨細胞の働きに影響するとされています。それによって骨の質が低下してしまうので、骨密度がある程度保たれていても骨折するリスクが高まります。
実際、糖尿病や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病や慢性腎臓病があると、たとえ骨粗しょう症は軽度であっても骨折につながりやすいことがわかっています。特に糖尿病がある人では骨質が低下しやすく、骨折するリスクが大変高くなるので注意が必要です。

骨質を低下させない生活をしよう

骨質の低下を防ぐには、酸化ストレスを生じさせないことがもっとも大切です。生活習慣によって酸化ストレスが生じると、生活習慣病を招いてさらに酸化ストレスを増幅させる、という悪循環に陥ります。骨質の低下を招く生活習慣病を防ぐには、まず毎日の生活を見直して改善しましょう。そうすることが、骨を守ることにもつながります。
生活習慣病予防の基本は、食生活の改善と適度な運動、そして禁煙です。
肉類や揚げ物、お菓子など、自分が食べたいものだけを食べていると、血液中の脂質やブドウ糖などが増え、動脈硬化や糖尿病、脂質異常症、高血圧などを招きます。食事は本当に体が必要とするものを、過不足なくとるのが基本です。そのためには、主食、主菜、副菜を組み合わせて、栄養のバランスがとれた食事をしましょう。
バランスのとれた食事とは、単に肉などの高カロリーのものを避けることではありません。特に骨粗しょう症の人は上手に工夫をすることが大切です。例えば、お肉を食べるときは赤身を選ぶとカロリーが過剰にならずに、転倒しにくい体づくりに役立つたんぱく質を摂ることができます。また、ボリュームが足りないと思ったときは、牛乳やチーズなどの乳製品をプラスすれば満足感とともにカルシウムも摂れます。あるいは、豆腐や納豆などの大豆製品でたんぱく質をプラスすると、骨を強くするのにも役立ちます。牛乳を飲むとコレステロールの摂りすぎを心配する人もいるかもしれませんが、毎日1本飲んでも血液中のコレステロール値に大きく影響することはありません。もし、コレステロール値が気になる人は、低脂肪牛乳や無脂肪牛乳にするとよいでしょう。
食事の改善と並行して、運動を習慣にすることも大切です。運動は中性脂肪を減らしてHDL(善玉)コレステロール値を上げる効果があります。また血糖値を改善したり、血圧を下げるのにも有効です。さらには骨に負荷をかけて、骨量を増やすこともできます。
骨にとって有効な運動とは、ゆっくりと長く行えるもので、骨粗しょう症の人ではウォーキングがお勧めです。
昼間に日の光を浴びて歩くと、体内でビタミンDが合成され、カルシウムを効率よく吸収するのにも役立ちます。毎日30分程度歩くことを習慣にしましょう。
たばこは酸化ストレスを生じさせるだけでなく、エストロゲンの分泌を妨げ、骨量の減少と骨質の低下の両方を招きます。喫煙をする人は、骨の健康のために禁煙にとりくんでみてはいかがでしょうか。